2015年の「大祖国戦争」戦勝記念日 便りがないのは良い便り~Pas de Nouvelles, Bonnes Nouvelles~ 忍者ブログ

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2024年04月27日
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2015年の「大祖国戦争」戦勝記念日

2015年05月08日

ちょっとお堅いお話。

終戦70年を記念して「ウクライナ:勝利への道」展が催されている公文書館が近くだったので行ってきました。

戦勝記念日は多くの欧州諸国で「5月8日」、ロシア・旧ソ連諸国では「5月9日」となっていますが、今年からウクライナでは「ヨーロッパ」基準にあわせて、新たに8日を「記憶と和解の日」とし、「大祖国戦争」の戦没者を追悼しています(戦勝記念日はそのまま)。



またこれを機に、これまで追悼の象徴となっていた「ゲオルギー・リボン」のかわりに、英国などでWWIの休戦日につけられる「ポピー」が公式に用いられることになりました。 テレビをつけると多くの放送局が「1939-1945, We Honor, We Prevail」と記されたポピーを掲げ、戦時下の国民を奮い立たせるべく、"Glory to Ukraine, Glory to Heroes!(Слава Украине! Героям слава!"と視聴者に語りかける以下のようなCMを流しています。


お爺ちゃんと孫、最後にはGlory to Ukraine!


お婆ちゃんと孫、最後にはGlory to Heroes!

(ポピー、「1939-1945, We Honor, We Prevail」と)

(ポロシェンコ大統領とバン・キムン国連事務総長はこれを背景に戦勝記念式典を催した)

以下の記事にもあるように、現在ウクライナでは脱共産(ソ連・ロシア)化が進められているようです。4月初頭に議会を通過した一連の諸法案には、ナチスや共産主義のシンボルを掲げることを禁じるものがあり、例えば「大祖国戦争」という呼び方を「第二次世界大戦」に変えようという動きもみられます。またソ連時代に由来する街や道の名前も全て変えなければならなくなるかもしれません。


(ポピーの花飾りをつける祖国の母像)


そして何より興味深いのは、この動きに関連してソ連時代(1917-91年)のウクライナKGBの資料へのアクセスが解禁されたということです。これにより新たな歴史的事実(主に暗部でしょうが...)が発掘されるかもしれません。

昨年成立したポロシェンコ政権としてはこうして「民主主義」の原則を追求する「ヨーロッパ」の国家であることをアピールしたいのでしょうが、他方で上記の諸法案は「表現の自由」に反し、国のイメージダウンにつながるのではないか、また国家主導の歴史の書き換えはいかがなものか、そして国の分裂をいっそう深めてしまうのではないかと懸念する声が親露派・共産主義者以外からもあがっているとのことです。


 
(大祖国戦争博物館。下のボックスには「国連によれば14年4月から15年2月までにウクライナ東部では6000人以上の死者が出たとみられる」と記されている。WWII以降の歴史を振り返り、現在も続く東部地域での戦闘に関する特設展示をみるのは何とも複雑な気分だ)


いずれにせよ「ウクライナの領土を占領したナチスとソ連からの脱却」というフレームで歴史を捉え(直し)たうえで過去と向き合い、現在の危機を乗り越えようとしているのでしょうか。上記 KGB資料を管理することになる「Ukrainian Institute of National Remembrance」主導のもと作成された動画では、昨年の戦闘で23歳の孫を失ったWWIIの退役軍人にスポットライトを当て、エモーショナルに過去と現在をつなげようとしています。

Alexander J. Motyl, "Kiev's Purge: Behind the New Legislation to Decoomunize Ukraine," Foreign Affairs (April 28, 2015)

Olena Goncharova, "Ukraine breaks from Russia in commemorating Victory", Kyiv Post (May 7, 2015)

 



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